『SP』は、ペンダント、リングの他、キーパーなどでも使用されているモチーフで、日本らしさや和の雰囲気の強い作品といえます。
SPはNAOSHI氏自身の自画像『Self Portrait=セルフ・ポートレイト』が由来のネーミングで、『般若』といった方が伝わりは良いのですが、正確には『般若=嫉妬に狂った女性』なので、髭(ヒゲ)などの特徴を持った今作品は男性的なイメージであり、般若とは一線を画しています。
『SP リング』だと腕の部分にフレイムス(炎)が、また『SP on 2.5D PISTON & ART キーパー』であれば枠の部分にフレイムスが『和=日本の伝統工芸』らしい仕様で表現されております。
アメリカのフレイムスに多い、大味なモノと比較すると、日本の仏閣にある立体造形物のような、細かい立体の炎を彷彿させる雰囲気や質感は、日本人のNAOSHIだからこその表現といえます。
記載しないとほぼ伝わらない工程ですが、SP リングを例にとると
『1:フレイムスを彫る 2:その隙間を埋めるようにテクスチャー(叩き仕上げ)を入れる→3:結果、テクスチャーが“模様”のように見える』
となりますが、この作品は
『1:先にテクスチャーを入れる 2:その上からフレイムスをかぶせる→3:結果、テクスチャーが元々入っている“下地”の上にフレイムスが乗っかってくる』
になります。
画像だとわかりづらいかもしれませんが、叩きあげて作られた鎚目のような、『テクスチャー自体の大きさが各々違う』ため、ハンドメイド感が強く表現されております。
実物を見ると、テクスチャーの端をかすめたり引っ掛けたりして、上から炎を乗せているのがわかると思います。
モノ作りの姿勢は、まさに『微に入り細を穿つ』、GUCHOの一貫した部分です。
こだわりが積み重なって完成する、作品という言葉がよく似合うリングなのではないでしょうか。
実際に身に着けるとこんな雰囲気になります。
人差し指に着けると、リングの腕部分のフレイムスが主張でき、口の部分など抜きの仕上がりなので、野暮ったさもなく、着用感の良さが実感できるリングといえます。
『PYROMANIAC リング』より一回り小さく感じるボリューム感ですが、それなりの存在感を持っていますので守備範囲の広いリングといえるでしょう。
ちなみに、『SP ペンダント』のフェイス部分の大きさは『SP リング』より気持ち大きく、ペンダント、リング共に適正を狙った別のサイズ感でのリリースとなっております。
流用せずに、敢えて違うサイズを使い分けているところに、NAOSHIのこだわりを感じます。
普通にアイテムに触れても気付かないことに時間と労力をかけるのは、NAOSHIの作品に対する『責任』を全うしようとする姿勢といえるでしょう。
伝統的な、古い文化や作風に敬意を持ちながら妥協しないモノ作りの姿勢が、作品や品質における『信用』につながっているように思います。
2011年04月にリリース、30個限定で作られた『SP リング w/PISTON “LTD” & DICE CASE(アルミ製)』です。現在入手不可のセットですが参考までに。
もともと『SP リング』は、ペンダントやキーパーで評価が高く、リング希望の声を反映させて製品化したのがきっかけなので、この時のタイトルも『THE ANSWER(回答)』でした。
『SP リング』のフェイス部分と腕の部分(ピストン)の一体感は、顔に近いほど立体的で、真後ろに向かうほど平面的になっていく『グラデーション』のような、徐々に立体から平面に変わっていく、難しい表現を見事クリアした “LTD”仕様のリングでした。
事実、ピストンのヘッド部は厚み、深みがあり、後方のコンロッドのビッグエンド部は半分残して溶け込んでいるような仕上がり。
リングとしてリリースするにあたり、SPの顔をただ切って貼っただけでは納得できず、顔の角度調節や3mm程度ふかして(顔と腕の一体感を出すための処理)、気付かれないようなことに時間と労力を惜しげなくかけた作品でした。
現在、購入可能なモデルは先に述べた『SP リング w/FLAMES』で、この“LTD”仕様は『SP on 2.5D PISTON ART キーパー』からの派生イメージもあり、リングの腕部分にはピストンが半立体で入っておりました。
『2.5D』の代表作。Vツインのピストンから燃え上がったフレイムス(炎)の形状が、『和』な雰囲気を醸し出す、非常に完成度の高いキーパー。
初期GUCHOユーザーの所有率が高かったARTの名にふさわしい作品です。
カット・アウトの『2.5D ピストン&フレイムス』に『SP』が乗っかった、身に着けられる『作品』は、男性らしい腰周りのアクセサリーとして自身のコーディネートにも花を添えます。
『和洋折衷』なコンビネーションは、日本人デザイナー・NAOSHIならではの絶妙なバランス感覚によるもの。
ピストン周辺のフープ部分にも細かな『燻り(くすぶり)=テクスチャー』で表現するあたり、ディティールの積み重ねで作品を仕上げているのが見て取れます。
改めて『作品』として素晴らしいと思います。
“LTD”仕様のリングと比較して、純粋なデザイン性、反応の良さでいうと、『SP リングw/FLAMES』に分があり、作品単体での『デザインの足し算』に優れているのは現行品、という印象を受けております。
フレイムスの形状やバランスの良さが、そのまま評価となっているのが見受けられますよね。
ピストンは、車やバイクの心臓部であるエンジン内にある重要かつ象徴的なパーツで、モーター・シーンで多用されるアイコンといえます。
ハーレーのエンジン断面のイラスト画像を参照にしてもらうと、シリンダー(真ん中あたり)の内部にあるのが確認できます。
こういった工業製品の精度の高さや造形美が作品のデザインにも活かされている点から、デザイナーの背景を感じることができます。
ケースはアルミ製の「ダイス型」で、構図を決める作業だけで半日かかり、ケース上面と土台に彫られた、ブランド・ロゴがデザインされた面はレーザー加工ではなく『手彫り』で表現された、クオリティーの高さが魅力のケースでした。
工業製品のような非常に高い精度と、味のある手彫りの雰囲気といった、技術と感性が組み合わさったダイス・ケースは、ダイスの角が立ち過ぎれば工業製品に近くなり、角を落とし過ぎればPOPになり過ぎるため、絶妙なバランスで仕上げられておりました。
土台の部分にある『支柱』も前面は斜めに、後ろ面は垂直にして『座りの良い』状態になる、こだわりのケースでした。
適材適所、理に適った使い分け、組み合わせが最良の選択となり形になる。そんな作品がGUCHOの品質を今も変わらず物語っております。
最後に、ホースシュー派生のSPキーパーです。
パイロが乗るのとはまた違った、独自性の高いコンビネーションです。
リングとは違う、ペンダントサイズのフェイスを使うバランスの良さはNAOSHIのこだわりゆえ、だと思います。
生産性よりも品質重視の姿勢が作品を通じて感じられる、それがKUSTOM JEWELRYブランド、GUCHOの大きな魅力となっております。
GUCHOを通じて『MADE IN JAPAN』に、また『作品』の呼び名にふさわしい、シルバーアクセに出会えること願っております。